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開発フェーズ編 -
第29章 ワークショップ

29.1 ワークショップの目的

ワークショップとは、ADGとODGのコンカレントチームワークによる開発プロセスを円滑に行うための意志決定機構を備え待つ会議のことである。この会議には、問題解決に適したエキスパートが参加し、素早く意志決定を行って問題を収束させる。また、必要な場合は予算や期間調整を行える上級管理者も会議に参加することで、開発期間の調整や開発費の調整などを行なう。

29.2 ワークショップ一覧

Dropの各開発フェーズにおいて開催されるワークショップを以下に示す。

開催されるフェーズ ワークショップ名
問題領域分析 要求計画ワークショップ
要求モデルワークショップ
実装基盤ワークショップ
システム共通設計 システム共通ワークショップ
コンポーネント分析 再利用コンポーネントワークショップ

29.3 ワークショップ解説

要求計画ワークショップ

要求計画ワークショップは、ユーザ(開発依頼者)と開発者の中からキーエキスパートを選出して開かれる。

開催時期

問題領域分析フェーズ。要求仕様の変更や追加が行われる場合は、改めて開催される。

参加メンバ
進行責任役 ADG(システム管理者またはシステム分析者)またはユーザ。
議事録係 ADGのメンバー
主なエキスパート システム問題領域のエキスパート
ADG(システム分析者)
その他参加者 上級管理者(予算及び政治的決定を必要とする場合)
システム管理者
ADG(システム開発者)
ODG(コンポーネント分析者)
利用者(実際のシステム利用者が開発依頼者と異なる場合)
決定項目
  • 開発期間をふまえた要求仕様
  • 要求追加・変更の際の要求仕様
審議・作業内容

以下の作業を参加メンバに割り振り、ドキュメント化する。ワークショップでは、そのドキュメントを議論して、最終成果物として完成させる。尚、調査とプロトタイプが必要とされるものは、そのスケジュールを明確にして別途担当者を割付け、その進捗状態をワークショップで管理する。

  1. 要求事項を箇条書きする。
    システムが基本的に果たすべき条件について、箇条書きする。特殊な用語や分かりづらい用語について用語辞書を作成する。
  2. 要求条件の実現可能性を検証する。
    シナリオに記述されるキーワードや手順の中で、実現可能性の検証が必要なものを洗い出し、プロトタイプ開発の計画を立てて実施する。
  3. 開発期間と要求事項の調整する。
    要求事項を実現するための期間を見極め、システム基本計画書に定められた期間との調整をおこなう。
作成されるドキュメント
  • 基本計画書
  • 要求仕様書(用語辞書を含む)

要求モデルワークショップ

要求モデルワークショップは、要求仕様のオブジェクトモデル化のために少人数のエキスパートにより開かれる。

開催時期

問題領域分析フェーズ。要求追加・変更時にも開かれる。

参加メンバ
進行責任役 ADG(システム管理者またはシステム分析者)
議事録係 ADGのメンバー
主なエキスパート ADG(システム分析者)
ODG(コンポーネント分析者)
ユーザ(システム問題領域のエキスパート)
決定項目
  • 要求モデル
  • 要求追加・変更の際の要求モデル
審議・作業内容

システム分析者を中心に要求モデルを題材に議論し、ユーザと開発者の中で共通の理解を得る。小規模のモデルの場合は、ワークショップの中でクラス図を作成して完成させる。大規模開発の場合は、システム分析者の責任においてクラス図を作成した後、その内容についてこのワークショップを議論の場とし、モデルの洗練を図る。

作成されるドキュメント

シネマスコープモデルとDRO手法を使って作成されるドキュメント

実装基盤ワークショップ

実装基盤ワークショップは、システム開発の基盤を決定するために開かれる。

開催時期

問題領域分析フェーズ。アーキテクチャ要求の追加・変更時にも開かれる。

参加メンバ
進行責任役 ADG(システム分析者)
議事録係 ADGのメンバー
主なエキスパート ODG(コンポーネント分析者)
ADG(システム分析者)
データベース管理・設計者(データベースを必要な場合)
ネットワーク管理・設計者(ネットワークを必要な場合)
その他専門領域のエキスパート
その他参加者 ADG(システム設計者)
ODG(コンポーネント設計者)
プロトタイプ開発担当者
調査担当者
決定項目

開発システムの実装基盤となる以下の項目を決定する。

  • システムの動作環境の決定
    • 動作ハードウェアの選択
    • 動作OSの選択
    • GUIの選択
  • 開発環境と開発ツールの決定
    • 開発言語の選択
    • 開発支援ツールの選択
    • 市販コンポーネント製品
    • データベース製品の選択
    • ネットワーク製品の選択
  • システム実装のためのフレームワークの指針決定
    • フレームワーク製品の選択
    • フレームワーク構築の基本指針
  • システムの基本コンポーネントと再利用コンポーネントの構築
    • 再利用コンポーネントの構築基本指針
審議・作業内容

このワークショップは、開発基盤の最終決定を行う上で必要となる調査やプロトタイプ開発の計画と進捗、そして最終的な評価と判断を行うためのものである。スムーズなワークショップの運営のためには、会議の中で未解決事項を議論することをできるだけ避け、ワークショップより個々の参加メンバに作業を割り振り、その結果を審議するようにしなければならない。

もし、フレームワークを作成する必要がある場合は、ADGとODGからメンバを選出しフレームワーク開発チームを作ることをここで決め、メンバのアサインを行う。フレームワーク開発チームはODGの開発メンバの役割が割り付けられ、コンポーネント開発サイクルを持って運営される。開発メンバに問題領域の知識を持つADGメンバが含まれていることが重要となる。

作成されるドキュメント

開発基盤検討書

システム共通ワークショップ

システム共通ワークショップで審議される内容は広範囲にわたり、審議内容に応じて下記メンバーのなかから選出されてワークショップが開かれる。

開催時期

システム共通設計フェーズの中で定期的に開かれる。

参加メンバ
進行責任役 ADG(システム分析者)
議事録係 ADGのメンバー
主なエキスパート ODG(コンポーネント分析者)
ODG(コンポーネント設計者)
ADG(システム分析者)
ADG(システム設計者)
データベース管理・設計者(データベースを必要とする)
ネットワーク管理・設計者(ネットワークを必要とする)
その他専門領域のエキスパート
その他参加者 プロトタイプ開発担当者(ADG,ODGプログラマ)
開発依頼・発注者(機能と操作の打ち合わせ時に参加)
ADG(ドキュメント管理者)
決定項目

開発システムの実装基盤となる以下の項目について設計方針を決定する。

  • データストア設計
  • アプリケーション分割設計
  • プロセス・スレッド設計
  • ネットワーク設計
  • 信頼性設計(エラー処理構造の設計)

また、ユーザから見た機能や操作について仕様を決定する。

  • システム機能・操作設計
  • ユーザインタフェース共通設計

そして、開発メンバの開発環境を統一するために以下のルールを決める。

  • システム開発環境標準
審議・作業内容

このワークショップは、システム共通設計フェーズの進捗過程に応じて、下記の議題を基に審議し、最終決定をおこなう場として開かれる。

  1. 設計項目の洗い出し
    各専門分野のキーエキスパートが中心となり、システムに必要となる設計項目を洗い出し、その項目について設計の基本指針が定まるように、他の設計項目との関連事項について議論する。
  2. プロトタイプ開発の計画
    設計項目の中で、いくつかの代替案を持ち、仕様の決定ができないようなものについては、プロトタイプ開発をおこなうべきである。その場合は、できるだけプロトタイプ開発の対象範囲を狭めて、問題となる中枢部分だけをを実装して、その結果を仕様に反映させなければならない。ここでは、このようなプロトタイプの計画を立てて、担当者を割り振り、プロトタイプの結果を仕様に反映させることを行わなければならない。
  3. ADGとODGの設計作業分担計画
    設計の基本指針が定まると、その設計項目毎にADGとODGに作業を割り振る、その際に、クラスレイアカテゴリ図により再利用のレイア(Generic,AppParts,App)を明確にする。そして、GenericとAppPartsに属するカテゴリは、コンポーネント開発サイクルにより開発を行わせ、Appに属するカテゴリは、システム開発サイクルにより開発を行う。
    この作業分担は、ADGとODGの要因構成により柔軟に対応しなければならない、もし、ADGのメンバにオブジェクト指向技術スキルが低ければ、ODGの負担は大きくなり、Appレイアのクラス開発を支援することもある。
    また、逆の場合は、AppPartsレイアのすべてのクラスをADGのメンバで開発されることもあるだろう。このワークショップは、作業分担を明確に行うための責任と権限を持ち、ADGのリーダとODGのリーダの話し合いで決定しなければならない。
    必要ならば、ADGメンバとODGメンバで構成されたフレームワークチームを作ることも検討し、本ワークショップで決定する。フレームワークチームの結成については、すでに実装基盤ワークショップで決定されているかもしれない。
  4. 計画を実施する下位フェーズの進捗管理
    これは、ADGとODGに分配した開発の進捗状態を監視して、システム開発全体のスケジュールを管理するものである。
  5. 設計調整
    これは、アプリケーション設計・実装フェーズやコンポーネント設計・実装フェーズの詳細化の過程で、システム共通設計フェーズで見落された設計の問題点が表面化された場合に行われる。このような時には、ADGとODGのリーダを通じて、問題点が整理された上で、このワークショップに報告される。それを受けて、システムの統合的な視野で問題解決を行って仕様を調整していくことがこのワークショップに参加しているメンバの使命となる。その際に、アプリケーション分割の変更やスケジュールの調整も行われることもある。スケジュール変更の必要性がある場合は、要求計画ワークショップを開き、その中でシステム管理者とユーザの了承を得る必要がある。
作成されるドキュメント
  • システムアーキテクチャ仕様書
  • システム機能仕様書
  • システム操作説明書
  • システム開発環境標準

再利用コンポーネントワークショップ

再利用コンポーネントワークショップは、企業レベルで再利用資産を効率的かつ計画的に構築・利用するための戦略を立てて運用する。

開催時期

コンポーネント分析フェーズ(コンポーネント分析者は常に、この問題に取り組み、定期的または必要時にワークショップを開催する)

参加メンバ
進行責任役 ODG(コンポーネント管理者、またはコンポーネント分析者)
議事録係 ODGのメンバー
主なエキスパート ODG(コンポーネント分析者)またはコンポーネント発案者
データベース管理・設計者(データベースを必要な場合)
ネットワーク管理・設計者(ネットワークを必要な場合)
その他専門領域のエキスパート
その他参加者 上級管理者(予算及び政治的決定を必要とする場合)
コンポーネント管理者
コンポーネント開発の要求を出したADGメンバ、コンポーネント利用者
決定項目
  • 再利用コンポーネント構築の計画を立てる。
  • 企業の再利用基盤構築のための短期・長期戦略を定める。
審議・作業内容

再利用コンポーネント構築に関する基本的な決定を下すためにコンポーネント構築の提案事項やシステム要求などを、このワークショップを窓口にして一本化し、開発を計画する。また、すでに構築されたコンポーネントの品質や再利用度についてアンケートやインタビューなどにより追跡調査を行う。

作成されるドキュメント
  • コンポーネント開発計画書
  • パッケージ仕様書

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